イザベラバードの本が発端となっているのかわからないが、相変わらずちょっと前の日本などに興味を持ったりしていて、先日「私の日本地図 周防大島」宮本常一 を買って読んだ。読み方は半分以上飛ばし読み。これは自分の読書スピードが遅いのと、あんまり読書好きではないのと、時間をあまりかけたくないからなので、内容がつまらないわけじゃあなく。
この本、原本が1971年。写真が沢山あって、写真だけ見たときに、失われてしまった昔の風景を懐古する内容かと思った。第一印象としては、写真を見て、あーこんな風景昔あったな。俺も見たかもな、古い奴はほんとに味が有っていいな。景色は変わってしまったんだな。残念だな。とか、そういうことを思い、イザベラさんのよりはずっと新しい内容だし、自分の子供の頃にもありえそうな景色もあるので、なんとか想像力を発揮すれば、バーチャルに昔の世界を想像したり思い出したりできる時代の話だと思えて、そういった有ったかもしれないような記憶を思い出したいと自分が思っているような気がして、そういうもろもろのことを確かめるために、たしか買ったような気がする。
実際本を読んでみたところ、宮本常一という人自体を僕はしらなかったが、この方は日本を代表する民俗学者で、本の内容も、なぜそういう景色になったか、なぜそういう選択を人はしたのか、どんな歴史を持つ人たちや地域なのか、という内容で、自分にとっては刺激のある内容だった。
どこがというと、まず、自分にとって古い景色は憧憬がかなり混ざっていて、古い写真を見るとまず先に書いたような、「あー昔はよかったな」的な気持ちが入って来て、つまり、昔よし、今悪し、昔味あり、今味なし、昔不便、今便利だけどつまらない、今の景色は誰かが無自覚に古き良きものを破壊して出来たものだ、というかなり酷いバイアスがかかっていて、もちろんじゃあ過去に戻るかい?といわれたら自分は「はい」とは言わないことも理解しつつ、しかしやっぱり昔はどんなだったんだろうという気持ちには、あこがれが混ざっている。
でも著者は、なぜかつての環境が破壊されて、今の状態になったのか、ということを、本の中で説明している。なんで防波堤を作ったのか、なんで故郷のきっと思い出が沢山ある海の埋め立てをすすめたのかとか。そういった話は、自分にとっては新鮮だった。ちゃんとその地域を愛しているひとが、その地域のことを考えて、開発し、結果としてはつまらない景色に変わっていったことも、自覚している。
それから、もう一つ新鮮だったのは、今はどうなのか知らないが、この本が書かれた時代には、登場する瀬戸内海の島の人は、自分の島を天国だと言う人もいたということ。ハワイで財産を作ってまた島に戻ってくる人がいたりする。実際写真を見るに、とても良さそうなところに見える。(当時は)
ミュージシャンのBEGINなんかは島のことをたぶん愛していそうなんだけど、今でも日本の中でもそういう島や地域があるのだとは思うけども、実はこんなことを言うのは、親や祖父祖母には申し訳ない気もするが、僕は自分の故郷のことを、そうは思っていない。家族や仲良しと遊んだ思い出は貴重なものだが、郷土を愛したり天国だなどとは全く思っていない。多分10年くらい前からどんどんつまらないところになってしまっていると思う。味のない整備された景色はあるけど、そのかわり思い出の景色はなくなってしまった。
かといって過去の景色が残っていたとして、どこまでそれを気に入ったままでいれるのかはわからない。景色はなくなってしまうからこそ、好きだったことになるのかもしれない。新しい景色にはそうなった適切な理由もあるはずだし、もしかすると、誰かの利己的な策略もあるかもしれないし、そうするべきではなかったところも有るのかもしれない。とにかく、景色は変わってしまって、そこに何か感情が湧くということはない。
今生まれてくる人はどう思うのかなあ。
ちなみに瀬戸内海の現状は、どうなっているのかわからないけど、上空から見てつまらないと、この本の著者もこの本の中で述べていて、安藤忠雄も、時期は違うが言っていて、では、それに対してどういう挑戦をしたのか、安藤忠雄の作った、瀬戸内海の建物は見てみたい。
昔の僕のうちの木の雨戸には、ピンホールがあって、朝まだ雨戸を開けないうちに、じいさんの寝ている部屋のあたりまで、廊下を滑って行くと、そのピンホールから外の景色が曇りガラスに逆さまに写っていて、なんだこれ!って驚いたことがあった。よかったなあって思うけど、クーラーさえ無かったわけで、夏よく平気だったな。
もとの姿は想像するしかないんですが、相当に綺麗な景色だった気がします。
私が住んでいる島も昔は七つの島に分かれていたそうです。
投稿情報: めぎや | 2008年5 月15日 (木) 02:47
ちなみに「私の日本地図」シリーズでは色々な地域が出ていますが、自分の故郷のあたりについては無いです。そういう本を探してもしあったら是非みたいです。
投稿情報: ks | 2008年5 月16日 (金) 01:52